千葉地方裁判所 昭和48年(行ウ)11号 判決 1978年6月16日
主文
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一、当事者の求める裁判
一、原告
1、被告が、原告に対し香取郡神崎町小松字寺前七六三番田七一七平方メートルの換地として同所五七六番一田六九二平方メートルを、訴外日改仁兵衛に対し同所七六四番所在の田の換地として同所五七五番所在の田を各指定した処分はいずれも無効であることを確認する。
2、訴訟費用は被告の負担とする。
二、被告
主文同旨
第二、当事者の主張
一、請求の原因
1、原告は被告改良区の小松並木工区内に香取郡神崎町小松字寺前七六三番田七一七平方メートル(以下本件従前の土地という)を所有していたところ、被告は昭和四四年一月一〇日、本件従前の土地の換地として、同所五七六番一田六九二平方メートル(以下本件換地という)を指定する旨の処分をなし、右処分は右同日原告に通知された。
2、しかしながら、右換地処分は次の理由により無効なものである。
(一) 土地照応の原則違反
本件従前の土地は別紙図面(一)のとおり農道に接する部分が長く、農作業を行なうのに極めて便利な土地であつたところ、本件換地は別紙図面(二)のとおり形状において本件従前の土地と極端に異なり、また、農道に接する部分も短かく、農作業の遂行が困難な状況となつた。右の次第で本件換地処分は土地改良法五三条一項二号(なお、本件換地処分当時は昭和四七年法律三七号による改正前で同条一項一号)にいう従前の土地と照応しない違法があるものといえ、無効とされるべきものである。
(二) 公序良俗違反
原告は本件換地処分がなされる前後に数回にわたり被告に対し、口頭または書面で本件換地の指定につき異議を述べ、かつ、原告所有の本件従前の土地に対しては別紙図面(三)のとおりに換地の指定をされるように希望していたにも拘らず、被告はこれを無視して本件換地処分を強行したものである。
しかして、右の原告の希望は何等他の関係権利者に迷惑を及ぼすところがないものであるが、これを容れずになされた本件換地処分は前記(一)に述べたとおり原告に多大な不利益を蒙らせるものであるところ、被告改良区における土地改良事業において、かような不利益な処分を受けたものは、全関係権利者二六六名中原告ただ一人であつて、いわば村八分的な差別扱いというほかなく、かかる本件換地処分は民法九〇条にいう公序良俗違反として無効とされるべきである。
3、しかるところ、本件換地処分は本件従前の土地と接する訴外日改仁兵衛所有の香取郡神崎町小松字寺前七六四番所在の田の換地として、同じく本件換地と接する同所五七五番所在の田を指定した換地処分と密接不可分の関係にあるので、本件換地処分が無効なものである以上、右訴外人に対する右換地処分もまた無効とされることを免れないものである。
4、よつて、原告は本件換地処分ならびに右訴外人に対する換地処分がいずれも無効であることの確認を求める。
二、請求の原因に対する認否
1、1項の事実はすべて認める。
2、2項の事実のうち、本件従前の土地ならびに本件換地がいずれも原告主張のとおりの形状であること、原告から本件換地の指定につき異議が述べられたことはいずれも認めるが、(一)の土地照応の原則違反および(二)の公序良俗違反により無効であるとの主張はいずれも争う。
すなわち、被告改良区は農業の生産性向上、ひいては農業構造の改善に資する目的をもつて、土地区画整理、灌漑排水施設および農道等の新設・変更、農用地の集団化等の土地改良事業を施行してきたものであるところ、本件従前の土地が属する小松並木工区の事業計画においても、本件換地の東側道路沿いに用水路を設け、反対の西側に排水路を配備して、土地の区画、形状を整理するという設計となつていたものである。しかして、本件換地は右計画に基づき指定されたものであるが、本件従前の土地に比し、東側に用水路、西側に排水路が整備されて、その利用条件が改善されているものである。なお、仮に原告主張の別紙図面(三)のとおりに換地の指定をしたとすると、原告の換地は用水路のみに接して排水路と接することがなく、他方、その西側の訴外日改仁兵衛の換地は排水路のみに接して用水路と接するところがなく、前述の本件換地計画に反することは勿論、被告改良区の事業目的そのものにも適合しないというべきである。なお、被告は原告からの異議の申出に対し、原告の希望を容れることは右の理由で不可能である旨説明している。
以上の次第で本件換地処分は何等違法とされるところがない。
第三、証拠関係(省略)
図面(一)
<省略>
図面(二)
<省略>
図面(三)(省略)